1. はじめに(自己紹介)
現在、社内のリスキリング制度を活用してプロダクトマネージャー(PM)へのキャリアチェンジに挑戦中です。もともとは技術職としてキャリアを歩んできましたが、社内プロダクトの立ち上げに関わる中で「モノづくりの根本から関わる仕事がしたい」と思うようになり、PMを目指すようになりました。
とはいえ、PMという職種はまだまだ日本ではなじみが薄く、実際に2025年の調査でも「プロダクトマネージャーの役割を正しく理解している」と回答した企業担当者は30%未満にとどまっています。そのため、「そもそもPMってどんなキャリアを歩むの?」「将来どうなれるの?」と疑問を感じることが多かったのも事実です。
今回は、私自身も悩みながら調べてきたプロダクトマネージャーのキャリアパスについて、2025年最新の情報をもとにやさしく解説していきます。
この記事では以下のことがわかります。
- PMとしての成長ステップ(ジュニア → 中堅 → 上級)
- いま求められるスキルや学び方
- 未経験から始めるルートと戦略
これからPMを目指す方や、転職・異動を考えている方のキャリア設計のヒントになれば嬉しいです。
2. プロダクトマネージャーとは?まず役割を正しく理解しよう
プロダクトマネージャー(PM)は、「ユーザーの課題を解決するプロダクトをつくり、価値を最大化する責任者」です。
よく「プロジェクトマネージャー」と混同されがちですが、PMが向き合うのは“スケジュール”や“進行管理”ではなく、“何をつくるか”という意思決定です。たとえば、ある機能を追加するかどうか、ユーザー体験をどこまで改善するか、収益性とのバランスをどうとるか――といった問いに向き合い、関係者を巻き込みながら前に進めていくのがPMの役割です。
PMの仕事内容
- ユーザーや市場の課題を見つける
- チームと一緒に“解決策(プロダクト)”を形にする
- ビジネスとして価値が出るようグロースを考える
- ユーザーや市場の課題を見つける
- チームと一緒に“解決策(プロダクト)”を形にする
- ビジネスとして価値が出るようグロースを考える
つまりPMは、ビジネス・デザイン・テクノロジーの交差点に立ち、バランスをとりながらプロダクトの舵取りをするポジションです。
他職種との違いは?
職種主な役割PMとの違い | ||
---|---|---|
プロジェクトマネージャー | スケジュール・進行管理 | プロダクトの「何を作るか」は決めない |
エンジニア | 実装・開発 | 技術面の実行者。仕様の決定はPMが担う |
デザイナー | UI/UX設計 | ユーザー視点に特化。全体戦略の責任はPMが持つ |
営業・CS | 顧客対応・フィードバックの収集 | 現場の声を集める側。プロダクトへの反映はPMが判断 |
PMはこれらの職種と連携しながら、「ユーザーにとっての最適解」を見つけ出し、プロダクトを形にしていきます。そのため、コミュニケーション力や仮説思考、意思決定力がとても重要になります。
3. プロダクトマネージャーの典型的なキャリアパス
プロダクトマネージャーのキャリアは、段階的にステップアップしていくのが一般的です。
ジュニアレベルから始まり、スキルと経験に応じて中堅、上級、そして経営レイヤーへと進むことができます。
ここでは代表的なキャリアステップを4つに分けてご紹介します。
ジュニアPM(アシスタントPM)フェーズ
目安:キャリア初期/1〜2年目/年収500〜700万円程度
- シニアPMのサポートとして業務を行う
- 要件定義やユーザー調査、KPI計測の一部を担当
- SQLやBIツールを使った簡単なデータ分析に挑戦
- プロジェクトの全体像や社内連携の流れを学ぶ

このフェーズでは「PMの仕事ってこういう感じなんだ」という感覚をつかみ、土台を固めることが重要です。
中堅PM(プロダクトオーナー・PdM)フェーズ
目安:3〜5年目/年収700〜900万円程度
- 自分が主担当のプロダクトを持ち、仕様決定やロードマップ設計を任される
- エンジニア、デザイナー、マーケターとの連携をリードする
- 利用データやユーザーの声をもとに改善サイクルを回す
- 売上や事業KPIとのつながりを意識した意思決定が求められる

このフェーズで「プロダクトの成功=自分の責任」と感じられるようになると、大きな成長につながります。
上級PM(グループPM/PMマネージャー)フェーズ
目安:5〜10年目/年収900〜1,200万円以上
- 複数のプロダクトやチームを統括し、マネジメント業務が中心になる
- メンバーの育成、評価、採用にも関わる
- プロダクト全体の戦略設計や他部署との調整が増える

「プロダクトをつくる人」から「プロダクトをつくる人を育てる人」へと役割が変わってきます。
CPO(Chief Product Officer)や事業責任者フェーズ
目安:10年〜/経営層ポジション/年収1,500万円〜
- 全社のプロダクト戦略を統括し、経営判断に関与
- 予算配分・組織設計・新規事業提案など多岐にわたる業務
- 社長・CTO・CXOと並ぶレベルで意思決定を行うこともある

このフェーズでは、PMとしての経験だけでなく「経営者視点」が求められます。
補足:キャリアは一直線じゃなくていい
PMのキャリアパスは、必ずしもこの順番どおりとは限りません。途中でマーケティングやUX、BizDevなどに一度軸足を置く「ジグザグ型」のキャリア形成をする人も増えています。
自分の得意な領域や興味に応じて、“自分らしいPM像”を築くことが大切です。
4. 【2025年版】PMキャリアに必要なスキルと実務経験
プロダクトマネージャーとしてキャリアを築いていくには、単なる「調整役」ではなく、“意思決定の質”を高めるスキルが必要です。
特に2025年現在、テクノロジーや働き方の変化に伴って求められるスキルも大きくアップデートされています。
ここでは、PMとしての市場価値を高めるために押さえておきたいスキルと経験を4つの軸で紹介します。
① 生成AI活用スキル
2025年、多くの企業が生成AI(例:ChatGPT、Claudeなど)をプロダクトに組み込む動きを強めています。
そのため、PMにも以下のようなスキルが求められ始めています。
- LLM(大規模言語モデル)の基本的な理解
- プロンプトエンジニアリングの知識
- AI機能の活用を想定した要件定義・ユーザーストーリー設計
- 検証(ABテスト)やガバナンス設計への関与
💡補足:すべてエンジニアレベルの知識が必要というわけではありません。「どうやってプロダクトに組み込めばユーザーに価値があるか?」を考えられる視点が重要です。
② データ分析スキル(SQL・BIツール)
PMの意思決定は、感覚ではなくデータにもとづいて行うことが基本です。そのため、以下のようなスキルは中堅レベル以上では必須とされています。
- SQLでのデータ抽出(BigQuery, Redashなど)
- LookerやTableauなどのBIツール操作
- ファネル分析やリテンション分析の実務経験
実際、求人票の「歓迎スキル」にも「SQLが使える方」「KPI設計の経験がある方」といった記載が増えています。
③ ノーコード・ローコード開発スキル
プロトタイピングやPoC(概念実証)段階で、スピーディに仮説検証できるPMが重宝されています。ノーコード・ローコードツールの活用はその一助になります。
- NotionやAirtableでの業務改善プロトタイプ
- BubbleやAdaloでの簡易アプリ開発
- ZapierやMakeによる自動化フロー設計
💡とくに「非エンジニアでも試作して動かせる力」は、スタートアップや少人数チームで強みになります。
④ コミュニケーション & プロダクト思考
どれだけ知識があっても、PMは「周囲を巻き込んでプロダクトを前に進める」ことが仕事です。そのため、以下のような**“ヒューマンスキル”**も評価されています。
- チーム全体を前向きに動かすリーダーシップ
- エンジニアやデザイナーとの信頼構築力
- “なぜこのプロダクトが必要なのか”を語れる力(プロダクト思考)
初心者でも、こうしたマインドセットや姿勢は日々の業務の中で育てていける要素です。
スキルは段階的に身につければOK
一度に全部を習得しようとすると大変ですが、焦る必要はありません。
最初は「SQLを使って簡単な集計ができる」「ユーザーの声を仮説に変換できる」といった小さな実践からスタートし、段階的に引き出しを増やしていきましょう。
5. 初心者PMがキャリアを積む3つのルート
プロダクトマネージャーは“経験がすべて”という印象を持たれがちですが、2025年現在は未経験からキャリアをスタートするチャンスが着実に広がっています。
ここでは、初心者PMが実際にキャリアを積んでいく代表的な3つのルートを、実際の成功事例とともにご紹介します。
① 現職からスライドしてPMを目指す(社内異動・職種転換)
もっとも現実的で成功率の高いルートです。例えば以下のような事例があります。
- エンジニアからPMへ:技術的知見を活かしてプロダクト開発の仕様設計を担当し、現在はプロダクトオーナーとして活躍。
- 営業からPMへ:顧客の声をもとにプロダクト改善を提案し、PMに抜擢。現在はユーザー中心設計をリード。
- デザイナーからPMへ:UXデザインからプロダクトの企画立案を担い、PMへとキャリアアップ。
社内で信頼関係を築いている場合、少しずつPMとしての経験を積むチャンスが得られます。
② スクール・学習+転職で一気にチャレンジする
近年はPMスクールやオンライン講座を経て、未経験からPMポジションへの転職を成功させる人もいます。
- 事例:営業職からPMスクール(PM School)に通い、ポートフォリオを作成。その後ベンチャー企業に転職し、ジュニアPMとして活躍中。
- 事例:異業種(金融)からオンライン講座(Udemy)で体系的に学習後、副業で実績を作り転職を実現。
重要なのは、学んだ内容を具体的に形にして示すこと。ポートフォリオや副業経験が転職成功のカギとなります。
③ 社内のリスキリング制度を活用する(企業内チャレンジ枠)
近年、多くの企業がDX人材の育成に取り組んでおり、社内のリスキリング制度を活用する人も増加しています。
- 事例:製造業で営業職だった方が、社内研修を受けてPMアシスタントとして実務経験を積み、正式にPMとして異動。
- 事例:大手IT企業でマーケターだった方が、社内公募を活用して小規模プロジェクトを担当し、その後PMへとキャリアチェンジ。
給与やポジションを維持しながら挑戦できる点が、このルートの魅力です。
自分に合ったルートを見つけ、少しずつPM経験を積み上げていきましょう。
6. 企業はどんなPMを求めている?採用トレンドとキャリア戦略
プロダクトマネージャーのニーズは年々高まっており、2025年上半期も採用市場は活発です。ただし、企業が求めるPM像には明確な傾向があり、それを理解することで自分のキャリア設計にも活かすことができます。
この章では、最新の採用トレンドと企業が期待する人物像について解説します。
2025年上半期のPM採用動向まとめ
- 求人件数は前年比約1.5〜1.9倍に増加
- 「未経験歓迎」求人も約3割に拡大(※PM専門メディア調べ)
- 特に生成AI・SaaS領域のPMニーズが急拡大中
PM職の求人は、大手企業だけでなくスタートアップ・外資系SaaS企業など幅広い業種で増加しています。背景には以下のような要因があります。
- DX推進による社内システム刷新
- 自社サービスの立ち上げ・グロース需要
- 生成AIを活用した新規事業開発の加速
💡補足:PMの業務の約4割がリモートでも可能とされており、地方在住でもフルリモートでPM職に就くチャンスも拡大しています。
企業が求めるPMの人物像とは?
企業の求人や採用担当者の声を調べると、以下のような資質がよく挙げられます。
求められる資質・スキル解説 | |
プロアクティブな姿勢 | 指示待ちではなく、自ら課題を発見・提案できる人 |
学習意欲・吸収力 | 新しい技術や手法(生成AI、ノーコードなど)に敏感な人 |
チームとの共創力 | エンジニア・デザイナーと対等に会話し、信頼を築ける |
仮説思考・データ活用力 | 問題を分解し、データにもとづいて意思決定ができる |
ユーザー志向 | ユーザー体験を常に中心に考えられるマインドセット |
未経験からの挑戦であっても、「現職での経験をPM視点で語れること」「自分なりにプロダクトを考えて動いた経験」があると評価されやすいです。
大手 vs スタートアップ、どっちを選ぶ?
PMとしてのキャリアの積み方は、所属する企業のステージによっても異なります。それぞれの特徴を簡単にまとめます。
項目大手・メガベンチャースタートアップ | ||
裁量 | 限定的だが安定感あり | 広範囲で何でも任される |
業務範囲 | 担当プロダクト中心 | 0→1開発からBizまで横断的 |
成長環境 | 体系的な育成あり | 実戦経験を通じたスピード成長 |
求められる力 | チーム連携・調整力 | 自走力・意思決定力・柔軟性 |
初心者のうちは、「自分がどんな成長を求めるか」に応じて選ぶのがおすすめです。
採用トレンドをキャリア戦略に活かすには?
企業のニーズを踏まえて、次のような行動をとることでPMとしての市場価値を高められます。
- 生成AIやSQLなど“旬のスキル”を習得しておく
- 小さなプロジェクトでも「プロダクト思考」で関わる
- 「自分がPMだったらどうするか?」と常に考えておく
- 勉強会やPMコミュニティで最新トレンドに触れる
PMという職種は、「正解がない」仕事です。だからこそ、自分なりに考え、動ける人が評価されるということを忘れずに、着実に準備を進めましょう。
7. まとめ:キャリアに正解はない。だからこそ「最初の一歩」が大切
ここまで、プロダクトマネージャーのキャリアパスについて、2025年最新の情報とともにお伝えしてきました。
PMという仕事は、決まった形や資格で評価される職種ではありません。だからこそ、「自分は何を実現したいのか?」「どういう価値をユーザーに届けたいのか?」という自分なりの軸を持って、一歩ずつ前に進むことが大切です。
私自身もまだPMとして駆け出しの身です。経験も浅く、毎日が手探りですが、それでも“ユーザーに喜ばれるプロダクトをつくりたい”という思いだけは変わりません。
もし今、あなたが「自分にPMができるのかな?」と不安に思っていたとしても――
それは誰もが通る道です。
大事なのは、「まずやってみる」「関わってみる」「学んでみる」こと。
キャリアに“正解”はありません。
でも、一歩踏み出す人には必ず道が拓けます。
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