はじめに:なぜ「OKR」と「KPI」の違いを知ることが重要なのか?
プロダクトマネージャー(PM)を目指すあなたが、最初に悩むポイントのひとつが「目標の立て方」です。その中でも特によく混同されがちなのが「OKR」と「KPI」。
どちらも目標管理に使われるフレームワークですが、役割や活用場面は大きく異なります。OKRは組織のビジョンや戦略を実現するための“方向性”を示すものであり、KPIはその道中で“進捗や成果”を数値で可視化する役割を果たします。
本記事では、未経験PM・駆け出しPMの方に向けて、「OKRとKPIの違い」「活用場面の見極め方」「効果的な併用方法」を、実例とともにやさしく解説していきます。目標設計スキルを磨く第一歩として、ぜひご活用ください。
OKRとは?挑戦を導くビジョン指向の目標管理フレームワーク
OKR(Objectives and Key Results)は、「目指すべきゴール(Objective)」と「それをどう測るか(Key Results)」をセットで設計するフレームワークです。
もともとはインテルで誕生し、Googleが世界的に普及させたことで注目されるようになりました。現在では、メルカリやSansanなど日本の成長企業でも広く使われています。
OKRの構成
- Objective(目標):組織の方向性に沿った、挑戦的でワクワクするゴール(定性的)
- Key Results(成果指標):その達成度を測るための具体的な数値目標(通常3〜5個)
OKRの特徴と効果
- チームのベクトルをそろえる「北極星」のような役割
- 60〜70%達成で“成功”とみなすチャレンジ設計
- 意味ある失敗を許容し、学びと行動の質を高める文化づくりに貢献
OKRの具体例
- Objective:新プロダクトの初期ユーザーを獲得し、立ち上げを成功させる
- KR1:ローンチ3ヶ月以内に1000人のユーザー登録
- KR2:初回訪問から登録までのCVRを15%以上に
- KR3:オンボーディング完了率を80%以上に
OKRは「なぜこの目標を達成すべきなのか」を語れるように設計されているかが鍵です。意味と方向を共有することで、チームの行動が加速します。
KPIとは?業務の健康状態を測る“進捗のモニター”
KPI(Key Performance Indicator)は、業務や施策の成果・効率を数値でモニタリングするための評価指標です。
KPIの目的と役割
- 日々の業務の達成度や改善状況を「見える化」する
- 成果指標として個人・チーム・プロジェクトのパフォーマンスを評価する
- 定量的な目標設定と継続的改善(PDCA)の基盤となる
よく使われるKPI例
- MAU(アクティブユーザー数)
- CVR(コンバージョン率)
- NPS(顧客満足度)
- Churn Rate(解約率)
- CAC(顧客獲得コスト)など
KPIは、スプレッドシートやBIツール、ダッシュボードなどで可視化され、短期的な意思決定の判断材料として使われます。現場のスピードと精度を支える「現実の数値」を把握する手段です。
一目でわかる!OKRとKPIの違いまとめ
比較項目 | OKR | KPI |
---|---|---|
目的 | ビジョン・方向性を示す | 現状の成果・進捗を測る |
構成 | Objective + Key Results | 指標単体(数値) |
性質 | チャレンジング・未来志向 | 安定志向・現状管理型 |
運用期間 | 四半期〜年単位 | 日次〜月次〜四半期単位 |
評価基準 | 60〜70%で成功 | 原則100%達成を目指す |
対象範囲 | 組織全体・チーム単位 | 個人・施策・プロジェクト単位 |
▶️ たとえるなら:「OKR=コンパスや地図」「KPI=現在地を示すスピードメーター」
どう使い分ける?PMのための実践活用パターン
OKRとKPIは、どちらが優れているかではなく、目的に応じた“併用”がカギとなります。以下のように状況別に使い分けましょう。
活用シーン別の使い分け例
シーン | OKR | KPI |
新規事業・新機能立ち上げ | 🎯戦略目標・ゴール設定 | 📈施策ごとの進捗測定 |
改善フェーズ・運用中 | 🎯維持・最適化の方向提示 | 📈日々のKPIで課題特定と改善 |
中長期ビジョン共有 | 🎯会社・事業部の目標浸透 | 📈部署ごとのKPIで現状可視化 |
OKRは「なぜそれをやるのか?」という問いに答え、KPIは「どのくらい進んでいるか?」を示す。両者をセットにすると、目的と手段が整い、行動の質が高まります。
実例:スタートアップPMのOKR・KPI併用パターン
Objective:オンボーディング体験を改善して定着率を高める
- KR1:新規登録から7日以内の継続率を20%改善
- KR2:オンボーディング完了率80%以上
- KR3:NPSを+10向上
日常的に追うKPI:
- 新規登録者数
- 初日アクティブ率
- チャーン率
- サポート問い合わせ数
- 平均オンボーディング所要時間
▶️ ポイント:OKRで方向性を決め、KPIで実行の手元指標を確認する。これにより、軸がぶれずにPDCAを高速回転できます。
よくある落とし穴と対策
❌ KPIばかりを追って目的を見失う
→ 「なぜこの数値を追っているのか?」という問いを常に忘れずに。KPIは手段であり、目的ではありません。
❌ OKRが抽象的で実行に結びつかない
→ Objectiveが理想論だけになると、チームは混乱します。Key Resultsは明確かつ定量的に設計しましょう。
❌ OKRとKPIを分離しすぎて整合性がない
→ OKRとKPIを“別物”と考えず、「OKRを支えるためのKPI」を常に紐づけて設計・運用を。
まとめ:OKRとKPIを味方につければ、PMはもっと動ける
OKRとKPIの違いを理解し、状況に応じて正しく使い分けることは、PMの基本スキルです。
- OKRでビジョンを描き、
- KPIで進捗を測り、
- 両者をリンクさせて日々の判断と行動を支える
この習慣が定着すれば、プロダクトの成果だけでなく、チームの連携や意思決定のスピードも飛躍的に向上します。
最初は戸惑うかもしれませんが、振り返りと試行錯誤を繰り返すことで自然と身についていきます。まずは、小さなOKRとKPIのセットから始めてみましょう。
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