1. はじめに|「会議がうまくいかない…」と思っていた私へ
こんにちは、PMのたまごノートを運営している「たまご」です。
私はもともと技術職として働いていましたが、社内のリスキリング制度を活用してPM(プロダクトマネージャー)に挑戦しています。
PMになりたての頃、毎日のようにこう思っていました。

「会議がいつも脱線して終わる…」
「結論が出ないまま時間だけが過ぎる…」
そんな私が変われたきっかけが、ファシリテーションというスキルでした。
ファシリテーションとは、会議やディスカッションの場で中立的に進行し、意見を引き出して合意形成を支援する力のことです。
このスキルを意識して身につけたことで、会議がただの「情報共有の場」から、チームの知恵を引き出す価値ある時間へと変わりました。
この記事では、会議運営に悩む初心者PMがすぐに実践できるファシリテーションの基本を解説します。
さらに、具体的な手法をシーン別に紹介します。
- PMがファシリテーションを求められる具体的な場面
- 初心者PMがまず身につけたいファシリテーション基本スキル5つ
- 会議で使える3つの便利なフレームワーク(KPT・インセプションデッキ・ORID)
- 心理的安全性と多様性に配慮した話しやすい会議の作り方
- 会議を「時間のムダ」から「価値あるチームの学習の場」に変える考え方
2. ファシリテーションとは?PMにとって必要な理由
● ファシリテーションとは?
ファシリテーションとは、会議やディスカッションを中立的な立場で進行し、参加者全員の意見を引き出し、合意形成を支援するスキルのことです。
例えば、以下のような役割を担います。
- 議論の目的と流れを整理する進行役
- 声を上げにくい人からも意見を引き出す促進役
- 対立した意見を整理し、共通解を見つける調整役
自分の考えを押しつけず、チームが自ら答えを導き出せる場を整えます。
● なぜPMにとって重要なのか?
PM(プロダクトマネージャー)は、ビジネス・デザイン・開発など、立場も専門も異なるメンバーをまとめる「橋渡し役」です。
しかし、PMにはしばしばメンバーに対する強い権限がないため、「決める」ことよりも「納得感を持って合意する」ことが重要になります。
ファシリテーションを身につけたPMは、次のようなメリットをチームにもたらします。
- 全員が意見を出しやすい安心感が生まれる
- チームの方向性が共通認識としてそろう
- 合意形成が進み、決定が実行されやすくなる
- 意思決定の質が向上し、開発スピードも上がる
つまり、ファシリテーションは「会議を仕切る技術」ではなく、「チームをゴールに導くリーダーシップの一部」なのです。
3. PMがファシリテーションを求められる具体的な4つのシーン
PM(プロダクトマネージャー)は、プロダクト開発のあらゆる場面で「議論を前に進める進行役」として期待されます。
特に以下の4つのシーンでは、ファシリテーション力が成果を大きく左右します。
① プロジェクト・キックオフ(ビジョン共有/要件定義)
目的:チーム全員が「このプロジェクトの目的やゴール」を正しく理解すること。
- 事前にアジェンダやゴールを明確にし、議論がブレないようにする
- 参加者全員の意見を公平に聞き、方向性を一致させる
- 「自分たちは何をしないのか」まで明確にして、期待値のズレを防ぐ
② スクラムイベント(プランニング・デイリー・振り返り)
目的:チームの進捗を確認し、継続的に改善を回すこと。
- 限られた時間の中で話すべきことを整理し、会議が長引かないよう管理
- 声が大きい人に偏らず、全員から改善案や意見を引き出す
- 決まったことを次の作業に確実に反映するようフォローする
③ ロードマップ策定・レビュー会議
目的:中長期的な開発計画や優先順位を、関係者間で合意すること。
- 事実と仮説を整理して提示し、感情論に流されないようにする
- 複数の意見が対立したときは、論点を整理して選択肢を比較する
- 決定後は「誰が・いつまでに・何をするか」まで明確にする
④ 部門横断ミーティング(営業・CS・マーケなど)
目的:多様な視点を集め、顧客にとって最適な価値を見つけること。
- 専門用語や前提知識のギャップを埋める「通訳役」になる
- 声を上げにくい部署の意見も拾い、議論が一部の人に偏らないようにする
- 決めるべきことをその場で明確にし、「結論が出ない会議」を避ける
共通して意識すべきポイント
- 中立性を守る:自分の意見に誘導せず、チーム全体で考えをまとめる
- 議論を可視化する:メモやホワイトボードで論点を共有し、認識のズレを防ぐ
- 心理的安全性を確保する:否定から入らず、まず意見を受け止める
- 決定事項をフォローする:会議後すぐにタスク・担当者・期限を共有する
4. 【初心者向け】PMが身につけたいファシリテーション基本スキル5選
PMになりたての頃、私は会議を「進める」ことに精一杯で、何度も失敗しました。
議題が終わらない、意見が出ない、決めたことが次回には忘れられている…。
でも、以下の5つを意識するようになってから、チームの会議は大きく変わりました。
4-1. 明確なアジェンダとゴール設定
最初の大失敗
PMデビュー直後、私は「とりあえず集まれば意見が出るだろう」と考え、アジェンダを用意せず会議を開きました。結果は想像通り、話題があちこち飛び、終了後に「で、結局今日は何を決めたんだっけ?」と言われる始末…。
- 会議招集時に「ゴール(何を決める会か)」を一文で書く
- 会議冒頭で「今日決めたいこと」を再度確認する
- 議題ごとに時間配分を設定し、話が長引かないようにする
4-2. 時間管理と脱線コントロール
時間が2倍に伸びた反省会
以前、議題に夢中になりすぎて2時間予定の会議が4時間に…。メンバーから「もう集中力が切れてます」と言われ、これは進行役の責任だと痛感しました。
- 各議題に終了予定時刻を設定する
- タイマーや画面共有で誰でも残り時間がわかるようにする
- 脱線した話題は「後で議論するリスト」に一時的に移す
4-3. 意見を引き出す力
声の大きい人だけで決まってしまった失敗
会議後にメンバーから「実は違う意見があったんですが、言い出しづらくて…」と打ち明けられたことがあります。それ以来、声が小さい人の意見を意識的に拾うようになりました。
- 発言が少ないメンバーには「◯◯さんはどう思いますか?」と声をかける
- 順番発言(ラウンドロビン)や匿名付箋で発言ハードルを下げる
- まずポジティブな意見から話してもらうと場が和む
4-4. 議論の整理と合意形成
【体験談】結論がうやむやになった会議
ホワイトボードに書かずに進めた結果、最後に「結局どの案でいくんでしたっけ?」と質問されて焦りました。以降、議論は必ず可視化しています。
- 論点や意見をホワイトボードや共有メモに書き出す
- 定期的に「今の論点」と「これまでの合意内容」を確認する
- 最後に「この結論で進めてよいですか?」と全員に確認する
4-5. 決定事項のフォローアップ
決まったはずのタスクが誰も着手していなかった…
「誰がいつまでにやるか」を共有せずに終わった結果、次回会議で進捗ゼロという失敗をしました。今では必ずその場で担当と期限を確定しています。
- 会議終了前に「担当者・期限・次の一歩」を読み上げる
- 会議後24時間以内に議事メモを共有する
- 次回会議冒頭で、前回の決定事項の進捗を確認する



失敗は誰にでもありますが、これらを少しずつ意識するだけで、会議の生産性は大きく変わります。
まずは1つのスキルからでも実践してみましょう。
5. 会議で使える!ファシリテーション手法3選
基本スキルを押さえたら、次は会議の目的に応じた手法(フレームワーク)を活用しましょう。
ここでは、初心者PMでも使いやすく、実務で特に出番が多い3つの手法を紹介します。
5-1. KPT法|短時間で改善点を整理したいとき
用途:スプリント振り返り・定例会の改善
所要時間:15〜30分
- 付箋やオンラインボードに3つのカテゴリで意見を書き出す
- Keep:良かった点・続けたいこと
- Problem:課題・問題だと思うこと
- Try:次に試す改善アイデア
- 類似意見をまとめ、重複を整理
- 「Try」の中から優先順位の高い1〜3件を決め、担当者と期限を設定
- Keepから始めるとポジティブな雰囲気になりやすい
- Problemが多い場合は「なぜ?」を5回繰り返すと原因が見えやすい
5-2. インセプションデッキ|プロジェクト初期の方向性をそろえたいとき
用途:キックオフ・新規機能開発前
所要時間:1.5〜2時間
特徴
10個前後の質問をチームで議論し、目的・ターゲット・スコープ・リスクを初期段階でそろえる手法。
例えば・・・
- 「私たちはなぜここにいるのか?」(目的の共有)
- 「やらないことリスト」(スコープ外の明確化)
- 「エレベーターピッチを作るとしたら?」(価値提案を一文に)
- 議題が広がりがちなキックオフでも、質問形式で進めると整理しやすい
- やらないことを決めておくと、後々の期待値ズレを防げる
5-3. ORID法|感情が絡む議論を整理し、合意形成したいとき
用途:ロードマップ策定・リスクレビュー・対立が起きやすい会議
所要時間:30〜60分
- Objective(客観):「事実として何が起こったか?」
- Reflective(感情):「それをどう感じたか?」
- Interpretive(解釈):「それは何を意味するのか?課題は何か?」
- Decisional(決定):「次に何をするか?」
- O→R→Iと段階を踏むことで、感情と事実を切り分けて建設的な議論ができる
- Dの段階では「検討する」「調整する」など曖昧な表現を避け、具体的な行動レベルまで落とし込む
手法選択の目安
状況 | 適した手法 |
---|---|
日常の振り返りや改善 | KPT法 |
プロジェクト初期の方向合わせ | インセプションデッキ |
対立が起きやすい重要会議 | ORID法 |
6. 心理的安全性と多様性に配慮したファシリテーションのコツ
どれだけ進行が上手でも、「話しにくい空気」では良いアイデアは出てきません。
PMがファシリテーターとしてまず意識すべきは、心理的安全性と多様性を尊重する雰囲気づくりです。
心理的安全性とは?PMが意識すべき理由
心理的安全性とは、「自分の意見や疑問、失敗を話しても否定されないと感じられる状態」です。
この状態が確保されると、チームは以下のように変わります。
- メンバーがリスクを恐れず、率直に意見を出せる
- 多様な視点が集まり、アイデアが広がる
- 結果として、意思決定の質とチームの学習速度が向上する
否定的な一言で空気が凍った失敗
以前、会議中にメンバーが出したアイデアに対し、私が思わず「それは難しいんじゃないですか?」と口にしてしまいました。
その後、他のメンバーの発言が明らかに減り、会議後に「言いづらい雰囲気でした」と言われて反省…。
それ以来、まずは「なるほど、そういう考えもありますね」と受け止める癖をつけています。
発言しやすい雰囲気を作る3つの工夫
- 否定しない・まず受け止める
- どんな意見でも「まずは受け止める」ことが大前提です。
- 否定ではなく肯定的に返す:「なるほど、そういう考えもありますね」「その視点は気づきませんでした」など。
- 全員の発言機会を保証する
- 匿名付箋やチャットを使うのも有効です。
- 会議冒頭でルールを共有する
- 「人ではなく課題にフォーカスする」「否定しない」「失敗を歓迎する」など、グラウンドルールを最初に宣言するだけでも、安心感が違います。
多様性を活かすための認識合わせ
異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まると、用語や前提の違いから誤解が生じやすいものです。
- 専門用語をかみ砕いて説明する
- 「今の意見は◯◯という理解で合っていますか?」と要約して確認する
- 会議メモをリアルタイムで共有し、全員が同じ情報を見ている状態を作る



心理的安全性の高い会議では、発言の量と質が明らかに変わります。
「安心して話せる雰囲気をつくる」ことこそ、ファシリテーターPMの最も重要な仕事のひとつです。


7. まとめ|ファシリテーションは「会議の技術」ではなく「チームづくりの力」
ファシリテーションは、単なる「会議を仕切るテクニック」ではありません。
PMにとっては、チームの知恵と力を最大化し、プロダクトを前進させるためのリーダーシップスキルです。
- 目的とアジェンダを明確にする
- 意見を公平に引き出す
- 議論を整理し、全員が納得する合意形成を支援する
- 決まったことを確実に実行につなげる
- そして、心理的安全性を高め、多様な声を尊重する
これらを意識するだけで、会議は「ただ話す場」から「学びと創造の場」に変わります。
初心者PMの方も、まずは小さな会議から実践してみてください。
うまくいかなくても大丈夫、ファシリテーションは経験を重ねるほど磨かれるスキルです。
「会議を変えることは、チームを変えること」です。
今日の1つの会議から、小さな改善を積み重ねていきましょう。必ずチームの信頼と成果につながります。
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